それは北浜の声だった。
彼女の耳にはいるはずの無い北浜の声がはっきりと聞こえたのだ。
それはあたかもデス・スター攻撃に向かうルーク・スカイウォーカーに語りかけるオビワンの声の様だった。
「そうだ、妖怪ウォッチ!」
もう迷っている余裕などは無かった。北浜は亜希子から小馬鹿にされながらも、絶対に役に立つからと、妖怪ウォッチを渡してくれた。きっと何かしらの根拠があるのだ。
亜希子は残された最後の力で濱田を振り払うと、這いつくばりながら鞄の置いてある場所まで辿り着き、ウォッチを取り出した。何かは分からないがメダルはセットされており、あとは電源のスイッチを入れるだけだった。
「お願い!」
亜希子がスイッチを入れると、まるで待っていたかのように即座にウォッチが起動した。
『イサマシ!召喚』
およそ酒の席には場違いな、安っぽいLED光と電子音があたりに響き渡る。
一体、何事が起こったのかと呆気にとられる周囲の面々。
・・・・・・
・・・・・
・・
何も・・・起こらない・・・・。
・・・
当たり前か!?
・ ・・・・
・・・・・
・
如何に追いつめられていたとはいえ、ほんの一瞬でもこんなモノにすがってしまった自分の事を、亜希子はつくづく大馬鹿者だと思った。
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