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2020/02/29 (Sat) 22:58
ゆうしゃのぼうけん ~生贄の村 恐怖の大蛸魔神~(105)

「いや、それがよお、見たような気もするんだが、正直、辺りが真っ暗でよく分からなかった、てゆうか全然思い出せないんだよなあ」
昨晩の出来事から実はまだ半日も経っていないのだが、全ての体験があまりにも現実離れし過ぎていて、もう既に夢の中の出来事だったような気すらしてくるのだった。
「実は私もです。確かに見たんですが、如何せん松明も全部消えていて、明かりが月明りだけでは、詳細を全然思い出せないんですよ。ああ・・出来る事なら今度は明るいところでじっくりと見てみたい・・」
• ・・・
一通りの馬鹿話が終わると、少しの間沈黙の時間が流れた。
マーリフは何やら考えている様子だったが、急に真顔になると、改まったような口調でこう問いかけて来た。

「勇者、パルスィートの事なのですが・・」
「おう、なんだよ。藪から棒に」
「昨夜の戦い、どう思いました?」

2020/02/28 (Fri) 00:24
ゆうしゃのぼうけん ~生贄の村 恐怖の大蛸魔神~(104)

「ゆゆゆ勇者、それまさか実際にパルが儀式の時に来ていたヤツじゃあ・・」
「そんな訳あるか。あれは魔神との戦闘時に完全に壊れちゃっただろ?村にあれと同じ形の替えの下着が何枚か残ってて、魔神を倒したことでもう必要無いからって長老が譲ってくれたんだよ」
「そうですか・・長老、儀式は全裸でやってるなんて、やっぱりウソだったんですね・・でも勇者、貰ったはいいですけど、あのパルの事だからもう2度と着てくれたりはしないんじゃないでしょうか?」
「そこなんだよ。お前、世界の何処かにあると言う“プレイヤア様の神殿”の噂って聞いた事あるか?」
「あ、それ知ってます!確かパーティーメンバーの着せ替えが自由自在に行えるという、幻の神殿ですね!?」
「そう、その神殿さえ見つけてしまえば、この貝殻の下着も、それどころかもっとエッチな衣装だって不可抗力的に着せ替えてしまうことが出来るかもしれないぞ」
「うわ~~勇者、ワルですね~、てゆうか最高です。夢が広がりますね~・・
そうそう、ところで勇者、ここだけの話、昨日その・・見ました?パルのその・・上から下から諸々・・・」
うお、マーリフ、いきなりそれを聞いて来るか!?

2020/02/27 (Thu) 01:02
ゆうしゃのぼうけん ~生贄の村 恐怖の大蛸魔神~(103)

「なんだかんだで、結構いろいろ貰っちゃいましたね」
魔神を倒したお礼という事で、俺達は村からいくつかのアイテムを受け取っていた。
そこそこ値打ちのありそうなものから、一見何に使うか分からないような物まで様々だった。
「ほら、この赤い宝玉なんて珍しいぜ、こないだお前の師匠のとこに似たような青と黄色の玉預けたよな?」
「そういうのってすぐにでも換金して武器や道具を買いたいんですけど、なんか意味ありげな感じがして売るに売れないんですよね。ほら、おとぎ話とかだと7つ集めたら怪鳥が飛来して空を飛べるとか、よくあるじゃないですか・・」
「ハハ、まさかな・・あ、そうだ、そんなおとぎ話よりもだな、お前には内緒にしてたけど、いいもの貰ったんだよ・・ほら・・これ!」
俺は道具袋の中から今回ゲットした中でも最強クラスとも言える、あるアイテムを取り出した。
「ああっ、勇者!こ、これって・・」
「じゃじゃ~~~ん♪どうだ、すげえだろ」
俺の手の中には、パルスィートが生贄の儀式の時に着ていたのと同形の貝殻の下着が握られていた。

2020/02/26 (Wed) 00:30
ゆうしゃのぼうけん ~生贄の村 恐怖の大蛸魔神~(102)

(勇者、厄介な連中が乗り込んで来ない内に我々もとっとと撤収しましょう)
マーリフが小声でそっと呟く。
(そうだな。マーリフ、村の外までジャンプ出来るか?)
(まあ充分とまではいかないですが、一応、仮眠は取りましたので魔力の方は何とかなるでしょう)

「それでは長老、俺達はこの辺で・・」
「ああっ勇者殿!本当にもう少しだけ・・」

挨拶もそこそこに、俺達は屋敷の勝手口からそそくさと抜け出すと、連中の目をかいくぐる為、村の外まで一気に短距離ジャンプした。
「やれやれ、あいつら祠まで追って来るかもしれませんね」
「そうなったらもう睡眠呪文でも使うしか無いよなあ。素人相手に大人げ無いけど」

何故かは分からないが、若い衆たちは結局追いかけてくることは無かった。
おかげで祠までの道すがら、俺とマーリフはゆっくりと話をすることが出来た。

2020/02/25 (Tue) 00:33
ゆうしゃのぼうけん ~生贄の村 恐怖の大蛸魔神~(101)

パルスィートは昨晩の凱旋時からムスッとしたまま殆ど口を利かなかった。今朝も“先に行って祠に魔法陣を設置しておく”などと理由を付けて、村人に見つからない内にサムスンを護衛に付けて早々に村を出て行ってしまった。
まあ気持ちは分かる。
昨晩、生贄役として半裸で村中の晒しモノにされたのが、よっぽど腹に据えかねたらしかった。

「おい、パルスィートさんがいねえぞ!!」
長老の屋敷の外から何やら騒々しい声がする。
「ええっ?本当か!!もう出発されたんだべか!?」
「それは無いべ~~、だって勇者の兄ちゃんまだ長老さとこで何やら話してんだもん!」
こいつら昨日、俺を散々踏みつけて行った神輿の若い衆じゃねえか!一体、何考えてやがる!!
「なんでだよ~、泊まるの無理ならせめて祠までお見送りするって、おら達の神輿にもう一度乗って頂くって決めたでねえか!」
「兎に角だ!最後に一目だけでもお会いして、あの美しい姿を目に焼き付けておかないと、俺達の気持ちがおさまんね!すぐに草の根を分けても探し出すだ!!」
あ~あ、これはパルスィート、早々に退散して正解だったわ。
彼女も色んな事があり過ぎて、わずか一日で学生としての甘さが抜け、大人としての要領を身に付けつつあるのかもしれない。
「今から長老さ家に押し掛けるだ。勇者の兄ちゃん絶対何か隠してるに決まってる!」
「んだ!例え勇者であってもあのオッパイさ独り占めするのは許されねえだ」
ふざけんな!誰が独り占めしてるだって!?

2020/02/24 (Mon) 02:47
ゆうしゃのぼうけん ~生贄の村 恐怖の大蛸魔神~(100)

「勇者殿~本当にもう行かれるのですか?」
「ええ、俺達には大魔王討伐という崇高な使命がありますので」
翌朝、俺達は早々に村を発つ準備を進めていた。
俺自身はろくに寝て無い事もあり、もう少しゆっくりしていきたいという気持ちはあったのだが、約一名、一刻も早く村を出たいと強硬に主張するものがいた為だ。
長老は名残惜しいというよりは、殆ど恨めしいというくらいのしつこさで俺達を引き留めていた。
「いやしかし、それでは私どもの気持ちが収まりません。せめて大恩人であるパルスィート様だけでも、もう2,3日・・」
(いやだから、そのパルスィートがとっととこの村を出たいと言ってるんだっての・・)
俺はどうやってこの空気を読まないじじいに断りを入れようかと四苦八苦していたが、上手い具合にマーリフが間に入って話を纏めてくれた。
「ままま、長老、我々はこれからジャンプ呪文を使用する為、魔神の祠に魔法陣を奉納しようかと考えています。そうすればいつでもこの村に瞬間移動することが出来ます。お気持ちは大変ありがたいので、お礼の宴については、また我々が落ち着いてからという事で・・」
「そうですかあ・・本当にまた来てくださいよ?特にパルスィート様にはくれぐれもよろしくお伝え下さい・・」

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